
映画『ラスト・ブラッド』は、2000年に劇場公開されたアクション・モダンホラー・アニメの傑作『BLOOD THE LAST VAMPIRE』を原作としている。この作品はフルデジタル・アニメーションの先駆けとして語り継がれており、プレイステーション2用ソフト“やるドラ”シリーズでゲーム化を果たしたほか、2005年には設定や世界観を一新したTVシリーズ「BLOOD+」が1年にわたって放送されるなど根強い人気を博している。
ここでは、映画『ラスト・ブラッド』をより深く楽しむ為にも、『BLOOD THE LAST VAMPIRE』と「BLOOD+」の魅力を徹底解剖していきます!

舞台は、1966年秋の日本、ベトナム戦争最中の米空軍・横田基地。戦闘機が慌ただしくスクランブル発進するその周辺で次々と起こる不審な自殺事件。
その陰に“翼手”と呼ばれる吸血鬼の存在を察知した“組織”は、基地内のアメリカンスクールに一人の少女を送り込む。彼女の名は“小夜”(SAYA)。セーラー服に身を包み日本刀を手にした小夜は、歴史の闇に蠢く翼手たちと激しい闘いを繰り広げる!
本作は、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』『イノセンス』『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』などでお馴染みの巨匠・押井守が企画協力、監督に『老人Z』の北久保弘之、キャラクターデザインにCGアート界のカリスマ・寺田克也、そして前述の押井作品も手掛ける日本最高峰のアニメーションスタジオ・Production I.Gという豪華布陣によって制作された。
日本刀を持ったセーラー服少女“小夜”の謎めいたヴィジュアル、ハードなアクションとヴァイオレンス描写、ハイクオリティなデジタル映像はアニメ界はもちろん映画界においても高い評価を獲得。『キル・ビル』のクエンティン・タランティーノ、『タイタニック』のジェームズ・キャメロンをはじめとする世界の一流クリエイターからも賞賛を浴びたほか、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門<大賞>や、The World Animation Celebration 2001(WAC2001)劇場映画部門1位など数々の賞を受賞する快挙を成し遂げた。
主人公・小夜役に抜擢されたのは、映画『ヒマラヤ杉に降る雪』で主演を務め、現在は国際派女優として活躍する工藤夕貴。感情を押し殺しながらも気性は激しい、という難しい役どころを見事に演じきっている。

2005年、沖縄。1年以上前の記憶を失っている女子高校生の音無小夜は、血の繋がりのない父・ジョージ、兄弟のカイやリクと一緒に暖かく平穏な日々を過ごしていた。
しかしそんな幸せな日常は、彼女の眼の前に突如出現した異形の生物“翼手”の存在によってもろくも崩れ始める。漆黒の服を身に纏い、チェロを奏でるミステリアスな青年・ハジの手引きによって刀を手にした小夜。過酷な運命を背負った彼女は、失った記憶、そして自分の存在を取り戻すために闘う!
劇場版『BLOOD THE LAST VAMPIRE』から5年、満を持してのTVアニメ化となった「BLOOD+」は、当時「機動戦士ガンダムSEED」「鋼の錬金術師」「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」などの人気作を輩出していた“土6”(土曜夕方6時)枠にて1年間にわたって放送された。
劇場版とゲーム版にも携わった藤咲淳一が監督・シリーズ構成を務め、キャラクターデザインは「探偵儀式」の箸井地図、企画協力に押井守、音楽プロデュースには『ラスト サムライ』『ダ・ヴィンチ・コード』のハンス・ジマー、そして制作はProduction I.Gが担当と、TVシリーズにおいても豪華なスタッフが集結している。
“少女が刀を使って翼手を斬る”というコンセプトを継承しながらも、内容の方は世界を駆け巡るアクション・ロードムービーとなっており、“戦争”をテーマに据えたドラマチックで奥行き感溢れるストーリーが展開していく。
主人公・小夜のルックスがポップで親しみやすい今風のデザインに変わった一方で、夕方6時の放送とは思えないヴァイオレンス描写も随所に見受けられたりと、表現や演出に対する制作スタッフの妥協のない姿勢も見どころとなっている。また、当時現役女子高生だった声優・喜多村英梨が小夜を演じたことも話題を集めた。
人気コミックやアニメを実写化した作品の中には、原作の登場人物や世界観をこねくり回してファンをがっかりさせてしまうものも少なくないが、『ラスト・ブラッド』では、セーラー服におさげ髪、日本刀を手にした少女“サヤ”(アニメ版では“小夜”)が謎の組織の指令を受けて戦う…というアニメ『BLOOD THE LAST VAMPIRE』の基本コンセプトはそのままに、実写版ならではの魅力もたっぷりと盛り込んだバランス感のある作風を実現している。
舞台が1970年であること、敵は戦乱の時代に大量に流された人の血によって力を得た種族“オニ”、サヤの育ての親・カトウの登場、サヤが唯一心を許すクラスメイト・アリスの存在など実写版ならではの要素は数多いが、中でも最も注目すべきはオニの頂点であり邪悪の源“オニゲン”がサヤの父親の仇として登場することだろう。
『BLOOD THE LAST VAMPIRE』では小夜が戦う理由や彼女の人物像などは全て謎に包まれており、そこを観る者の解釈に委ねることでストーリーに奥行きを持たせていたが、『ラスト・ブラッド』ではサヤに“父親の仇打ち”という戦う理由を授けることで、孤独な処刑人として生きる運命を背負った少女の人間らしさや心の弱さまでをも描き出している。
オニの群れを相手にスピーディーかつダイナミックなアクションを繰り広げる超人としてのサヤと、父親を愛し、クラスメイトと友情を育むことのできる一人の少女としてのサヤ――その両方のイメージが入り乱れて激しく交錯するクライマックス、“オニゲン”との対決シーンは観る者の心を震わせること間違いなし!
また、サヤ役のチョン・ジヒョンと、オニゲン役の小雪、アジアが誇る2大女優の美しさも実写版ならではの魅力であることは言うまでもない。
そういったオリジナル要素に引き込まれる一方で、物語冒頭の地下鉄をはじめとする、アニメ版で見覚えのあるシーンもしっかりと押さえてあるところが実に心憎い。初めて観る人は勿論のこと、アニメ版を知り尽くした人でも楽しめる仕上がりは、まさにアニメを原作とした実写映画のひとつの理想形と言えるのではないだろうか


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