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『セブン』『ソーシャル・ネットワーク』の鬼才デヴィド・フィンチャー最新作!映画『ドラゴン・タトゥーの女』特集

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作品紹介

イントロダクション:鬼才デヴィド・フィンチャーの最新作は、スウェーデン発の世界的超ベストセラー・ミステリー!!『セブン』『ゾディアック』を超えるフィンチャー“猟奇”ワールドの真骨頂! ここに極まる!!

『ドラゴン・タトゥーの女』場面

原作は「ミレニアム三部作」の第1弾として2005年に母国スウェーデンで刊行され、発売と同時に爆発的なヒットを記録した衝撃のミステリー! 日本では2008年に刊行され話題をさらい、全世界46か国、全三部作累計で6,500万部を突破した世界的超ベストセラーだ。この誰もが尻込みする聖域に足を踏み入れた名匠が、鬼才監督デヴィッド・フィンチャーだ! 40年前の少女失踪事件から炙り出される富豪一族の血塗られた歴史、連続猟奇事件の真実に挑み、移ろいゆくスウェ−デンの四季とは対照的な、暴力と強欲に彩られたミステリーと人間ドラマを得意の猟奇センスを存分に発揮させて描出! 『セブン』の異常性を超え、『ゾディアック』以上の粘着質な事件の全貌は、フィンチャー特有のダークで贅沢なビジュアルで語られ、“衝撃のラストカット”へと突入! 2012年『ドラゴン・タゥーの女』が、ミステリーの常識をくつがえす!

“007”ダニエル・クレイグが正反対ヒーロー像で血の歴史と猟奇事件を追うジャーナリストに!!『セブン』級猟奇演技を任された新生ルーニー・マーラが、衝撃的なダーク・ヒロイン像を構築!!

『ドラゴン・タトゥーの女』場面

事件を追うジャーナリスト、ミカエルを演じる名優は『007 スカイフォール(原題)』も待たれる“007”役で大人気のダニエル・クレイグ! 持ち前の渋い魅力はそのままに、正義を追求しながらも他人に心を許せない屈折したヒーロー像に挑み、『ゾディアック』級に事件に没頭していく男を好演! そして、超天才ハッカーのパンク調査員“ドラゴン・タトゥーの女”リスベットに大抜擢された注目女優が、『ソーシャル・ネットワーク』の新星ルーニー・マーラ! 性的関係を強要する猟奇的後見人を“逆転の発想”で切り返す、知的で残酷で自虐的な怪演を披露する一方、“ラストには超意外な表情!”も披露して観る者の神経を完全撃破! 鬼才フィンチャーが描く新時代のダーク・ヒロインとして、映画史に記録されることは確実だ! 二大演技派が繰り出すミカエルとリスベット、悪だけが解き明かす悪の真実に、ついていく準備は、いいか?

ストーリー:それは40年前に失踪した少女の捜索依頼から始まった名誉毀損事件で休職中の敏腕ジャーナリストが、スウェーデンに君臨する大富豪一家にまつわる血塗られた歴史の調査に乗り出す!!

『ドラゴン・タトゥーの女』場面

ジャーナリストのミカエルは、スウェーデンの経済界を牛耳る実業家ヴェンネルストレムの横領と癒着を暴く記事を発表するも、裏付けがないとして名誉棄損で訴えられ有罪判決を喰らってしまう。自身が発行責任者を務める雑誌「ミレニアム」の信用が地に堕ちることを恐れたミカエルは、同誌の共同発行責任者で恋人のエリカに迷惑をかけないためにも、休暇を取る――。クリスマスの夜、ミカエルの下に、かつてスウェーデンの経済界に君臨したヴァンゲル一族の長、ヘンリックの弁護士から電話が入る。それは、40年前に忽然と姿を消したヘンリックの親族の娘で16歳の少女ハリエットを殺害した真犯人を突き止めるという依頼だった。ヘンリックの推理によれば、血塗られた一族の何者かが彼女を殺害したという。ヴェンネルストレムのスキャンダルを報酬に差し出すというヘンリックのミステリアスな提案と事件性に、ミカエルは夢中になっていく――。

アウトローで天才ハッカー“ドラゴン・タトゥーの女”の協力を得、迷宮入り事件の真相に肉薄!!ミカエルとリスベット、悪だけが解き明かす悪の真実。2人が突き止めた身も凍る“真実”とは!?

ハリエットの日記を手に入れ調査を進める過程で、ミカエルはヴァンゲル一族の異常な人間関係と、当時スウェーデン各地で発生した未解決の猟奇連続殺人事件にブチ当たる。しかし、ハリエット失踪事件と猟奇連続殺人事件を紐付ける作業は一流ジャーナリストのミカエルにとっても至難の業で、リスベットという女性調査員の応援を得ることに。眉がなくヘビースモーカーのリスベットは華奢な容姿とは裏腹に、超天才ハッカーとしての才能、映像的に記憶する驚異的な調査能力を駆使して、ハリエットの日記から聖書になぞって猟奇連続殺人事件が実行されていたことを突き止める。調査に終焉が近づいたことを悟ったミカエルとリスベットは猛烈な勢いで事件の真相に近づいていくが、ミカエルが森を散策中に猟銃で撃たれる事件が発生! これは、ミカエルとリスベットに対する明らかな警告――衝撃の事実が目の前に現れようとしていた――。

ドラゴン・タトゥーの女を解く6ポイント!

『ドラゴン・タトゥーの女』―デヴィッド・フィンチャー印の卓越した凶暴性と才気の結晶をストレートで楽しめ!

『ドラゴン・タトゥーの女』場面写真

圧倒的な映像量と疾走感。『ドラゴン・タトゥーの女』は、”デヴィッド・フィンチャーの映画”として映画史に記録される事になるだろう。これほどフィンチャーの演出力と表現力をストレートに出した作品は久しぶりだし、主演の2人、音楽、シーン構成と編集に至るまで、全てが相乗効果を成した傑作だからだ。

まずは冒頭のツェッペリンでやられる。ミュージックビデオ時代のフィンチャーを思い出す、「移民の歌」の叫び声に合わせたメタリックな映像で、観客は直ぐさまフィンチャー・ワールドへ飛び込む。そして慌ただしく始まる雑誌ジャーナリスト・ミカエルの敗訴シーン。さらに、少女失踪事件解明の依頼人が抱える謎、バイクを飛ばす天才ハッカー・リスベットの登場と、3つの事象が平行して描かれ、息つく暇を与えない。話が進むにつれ画面を占めるのは、猟奇的な連続殺人事件関連の映像となり、凶暴なフィンチャー演出が踊りだすのだ。

過去のフィンチャー作品で、凶暴性が連想されるのは、『セブン』(’95)や『ファイト・クラブ』(’99)、そして『ゾディアック』(’07)だ。ここ数年は、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(’08)、『ソーシャル・ネットワーク』(’10)と、内面の凶暴性や拳をあげない社会の暴力性を描く作品が続いたせいか、久々にフィンチャー監督のストレートパンチをくらった気分になる。

『ドラゴン・タトゥーの女』ポスター

しかしここで特筆すべきは、『ドラゴン・タトゥーの女』がスウェーデン発ベストセラー小説の映画化であり、既に母国で映像化された後の製作だった点である。

映画は、同じ原作でも、監督による解釈が違うだけで全くの新作になる代物だ。過去ハリウッドが、英語圏以外の原作、あるいはオリジナルがあるものを再映像化した作品で、母国語版を越えて映画史に残る傑作と位置づけられるものは、実は少ない。例えば、ドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダース監督の『ベルリン・天使の詩』(’87)を、ハリウッドが英語版『シティ・オブ・エンジェル』(’88)としてリメイクしたが、オリジナルとは比べ物にならない評価に終わっている。最近では、今回同様スウェーデンが舞台の作品『ぼくのエリ 200歳の少女』(’08)を、アメリカ人監督マット・リーヴスが『モールス』(’10)として英語化したことが話題になったが、これも北欧がもつ圧倒的な雪の閉塞感には及ばなかった。原作国の空気感や匂いというものは、どうしてもハリウッド版では薄れてしまうし、総じて作品の魅力までも下げてしまう。

今回『ドラゴン・タトゥーの女』でフィンチャー監督は、英語化であっても、舞台をスウェーデンのままにし、登場人物の名前や名称など全て原作通りにした。過去の例を見る限り、それは一種の賭けだし、生粋のアメリカ人であるフィンチャー監督が、スウェーデンの空気感を取り込んだ表現ができるのか、不安視したのが正直なところだ。しかし監督は、原作のもつスウェーデン色をカバーして余りある、フィンチャー感とでも言うべき、独特のカラーとテンポ、音のスパイスで別格の空気感を作り上げた。

『ドラゴン・タトゥーの女』ポスター

一例をあげてみよう。まず事件の舞台となるスウェーデンの孤島。そこには古びた館と、やたらモダンな近代住居が対照的に登場する。近代住居では、すきま風が得体の知れない獣の声のように響く。あるいは、40年間未解決の事件を象徴する押し花の額縁が並ぶシーン。直前までダニエル・クレイグ演じるミカエルの表情で引っぱり、壁一面の押し花を圧迫感と共に一気に引き絵で見せる。ルーニー・マーラ扮するリスベットは、タトゥーを印象づけるバックショットを多用し、前半は謎めいた女を貫き、後半はバックショットそのものが彼女の感情を表す描写となっていく。登場人物それぞれの、人と会話する時の距離感を確実に変える。…これらは全てスウェーデン版にはない、フィンチャーの傑出した演出によるものだ。このたぐいのフィンチャー的映像と編集が、158分全てを埋め尽くしている。それほど、フィンチャー臭が強烈な映画に仕上っているのだ。

もちろん少数意見として、スウェーデン版に僅かながらの軍配をあげたいとする声もある。しかし筆者が見た限り、そしてヨーロッパを含む大勢の批評家のコメントを総合しても、フィンチャーの演出に勝る箇所は、スウェーデン版には見当たらない。冒頭で、デヴィッド・フィンチャーの“代表作”ではなく“映画”と記したのは、この理由からだ。『ドラゴン・タトゥーの女』映画版=(イコール)、フィンチャー監督であり、ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラの顔が即浮かぶと言う事だ。

(工藤静佳)

新生ルーニー・マーラが体当たりヒロイン列伝にパンキッシュ躍り出た!

『ドラゴン・タトゥーの女』場面写真

2月10日(金)、無事に日本公開を迎えた猟奇ミステリー『ドラゴン・タトゥーの女』。驚異的な記憶能力、天才的なハッカー技術を駆使して闘うヒロイン、リスベットを演じる新生ルーニー・マーラの活躍に日本中の熱視線が注がれているが、映画史に輝く“体当たりヒロイン列伝”で長らく不動だった序列が、パンキッシュに塗り替えられる胸騒ぎがする!

映画史で、体当たりヒロイン、それを演じる女優たちは相当数いたものの、記憶に残る仕事はごくわずか! 独創的&衝撃的アクトでなければ列伝に残れないわけだが、たとえば黄色のトラックスーツで大暴れ『キル・ビル』(03)のユマ・サーマン、親切で怖い『親切なクムジャさん』(05)のイ・ヨンエなど復讐モノでの活躍は少なくない。一方、凌辱系ジャンルでは哀愁の連続殺人鬼『モンスター』(03)、世界初のセクハラ訴訟『スタンドアップ』(05)のシャーリーズ・セロンが忘れがたく、海外ドラマの分野でも「24 TWENTY FOUR」のシーズンI(01〜02)で娘の代わりに犯された挙句、最終話で殺されてしまうジャック・バウアーの妻テリーも同列伝に名を連ねる猛者だ。皆、優劣つけがたい名パフォーマンスだ!

そして、この体当たりヒロイン列伝、トップに君臨中の女優が、あのジョディ・フォスターなのだ! アカデミー賞に輝く『告発の行方』(88)と『羊たちの沈黙』(91)は言わずもがな、乗員乗客全員を敵に回す『フライトプラン』(05)にジョディ版“狼よさらば”的な『ブレイブ ワン』(07)など、イェール大卒の高学歴とは無関係な肉体アクションの数々に身を投じる奮闘で、そのフィルモグラフィーは体当たり仕事の軌跡のみ!さらに円熟期を迎えた現在では最新作の『おとなのけんか』(2月18日公開)で大人のケンカをしているとかいないとかで、名実ともに体当たりヒロイン列伝街道を2012年現在も爆走中なのだ!

『ドラゴン・タトゥーの女』ポスター

しかし! 女王フォスターを引きずり下ろす気迫で殴り込みをかける新進女優が、『ドラゴン・タトゥーの女』の新生ルーニー・マーラだ! 天才ハッカーとして法スレスレの仕事さえ請け合う孤高のヒロイン、リスベットを演じたマーラは、耐えがたい屈辱に怒涛のように襲われながらも強靭な意志で幾度も立ち上がり、泣き言も言わずに己の人生を歩く強い女性だ。時に過剰な行動に出るマイナス面があるものの、頭脳と肉体を駆使して人生の諸問題を片付け、40年前の少女失踪事件を調査するダニエル・クレイグ演じる主人公の仕事を強力サポート!その頼れるヒロイン像が多方面で好評で、現在アカデミー賞の主演女優賞にもノミニー中。新演技派女優としても女王フォスターに迫る勢いだが、くしくも『パニック・ルーム』(02)でデヴィット・フィンチャー作品に出演経験がある女王フォスターとナニカト共通項も少なくなく、期待の後継女優と考えてもムチャな話ではないのだ。

また、女王フォスターと決定的に異なる新要素も要注目で、女王が得意とした社会のため、正義のため、家族のためという大義名分ではなく、新進のマーラは自分のために体を張るという感情移入しやすいヒロイン像を打ち出した。とかくサバイブしにくい現代では、自己流で人生をもがくマーラ演じるリスベットに共感票が集まること必至!『ドラゴン・タトゥーの女』が、働く女性たちのバイブルに祭り上げられる事態も絵空事ではないはず!

(鴇田崇)

ポイント04:フィンチャー監督が『ドラゴン・タトゥーの女』込めた真のテーマとは?

『ドラゴン・タトゥーの女』でも扱われる“猟奇殺人”と呼ばれる陰惨な殺人事件は、しばしば映画をはじめとする様々な作品のテーマとされてきた題材だ。

殺し方もエグければ、それらを料理して美味しく召し上がってしまうド変態のレクター博士を描く『羊たちの沈黙』(1991年)や、1900年代初頭に書かれた猟奇犯罪の本と同じ殺人が行われる『ボーン・コレクター』(1999年)、“公開殺人支援系サイト”のアクセス数に応じて拷問殺人生放送が行わてしまという、笑いごとでは済まないリアルさが高評価を受けた『ブラックサイト』など、猟奇的な作品を挙げればキリがないのだが、ここはやはり本作の監督であるデヴィッド・フィンチャーが手がけた『セブン』と『ゾディアック』という、ふたつの名作に触れておくべきだろう。

『セブン』は1995年に公開されたサイコ・サスペンスだが、キリスト教の用語「七つの大罪」をモチーフにした緻密な計算のもとに犯される猟奇的な連続殺人/拷問描写は、公開から10年以上を経た今も薄れることのないショッキングな内容だ。そしてアメリカで実際に起こった連続殺人事件を扱った『ゾディアック』は、現在も犯人不明な未解決事件を扱っている。そのためか、スリリングな展開や複雑な謎解きよりも、むしろ重厚な人間ドラマをメインに据えており、“事実を知るということのリスク”をじっくりと観る者に問いかけるかのような、一味違ったサスペンス映画に仕上がっている。

そして本作『ドラゴン・タトゥーの女』でも、ある猟奇殺人が大きくフィーチャーされているのだが、ここに登場する“聖書の一節になぞらえた連続殺人事件”は、何年も未解決のまま。やがて、それらが物語の本筋である「40年前の少女失踪事件」と交わったとき、人々の運命は大きく動き出す。そこから先は堰を切ったように物語はぐんぐんと進んでゆくが、そこまでに主役の2人(ミカエルとリスベット)のキャラクター描写にたっぷり時間を割いているため、観客は知らず知らずのうちに彼らに感情移入してしまうのだ。

『ドラゴン・タトゥーの女』場面写真

もちろん、思わず目を背けたくなる残酷な殺害描写も捜査の過程で描写&説明されるし、登場人物がサラリと吐露する近親相姦エピソードもかなりエグい。しかしそれらの刺激的な要素や謎解き過程をメインに描いた過去作と、この『ドラゴン・タトゥーの女』が決定的に異なる部分がある。それは、全くタイプの異なる男女が“出会い、惹かれあう”姿を描いた、ささやかなラブ・ストーリーが描かれているという点だ。単なるサスペンスやスリラー以上の深い物語性に気づいたとき、我々は改めてこの作品に感嘆することになるだろう。フィンチャー監督がこの作品に込めた真のテーマを感じ取ることができるのではないだろうか。

ポイント03:豚野郎への報復は映画史上最強レベルの復讐プラン!

『ドラゴン・タトゥーの女』場面写真

鬼才デヴィット・フィンチャーの最新作『ドラゴン・タトゥーの女』は『セブン』(95)『ゾディアック』(07)級の猟奇演出復活も話題の的だが、ヘンタイ男に凌辱されるヒロイン、リスベットが編み出す復讐プランもまた映画史上ダントツの猟奇度!一時の感情に任せた瞬間的復讐のみならず、以後男の人生を強制支配する完全なる報復劇が話題になりそうだ。

その加害者にして復讐の餌食となる被害者は、ビュルマンという小太りの俗物弁護士。後見人なしには社会生活を送れないリスベットの担当になるも、当該鬼畜は立場を悪用してリスベットに性的関係を強いるのだ。生活費を無心する度にレイプされることを悟ったリスベットは、完璧な復讐プランを考案!鬼畜の自宅にみすみす犯されに行くも、一部始終を隠しカメラで録画してしまうのだ。以後、証拠を握られたビュルマンは言いなりで、まさしくマナ板の上のブタ!リスベットにしでかしたことと同等の報復を受ける上に、リスベット考案の“犯罪防止策”まで施される始末! これは『デビルズ・ダブル -ある影武者の物語-』で股間を撃たれたレイプ魔ウダイ・フセインに匹敵するしっぺ返しで、鬼畜後見人は完膚なきまでに成敗されてしまう。その猟奇性、スウェ−デン版の比ではないっ!

『ドラゴン・タトゥーの女』場面写真

ところが、だ。彼女の復讐計画はここからが本番! 生活費を自由に使う許可を取りつけ、報告書に高評価を記さなければレイプ映像をネットに公開すると脅すだけでなく、ビュルマンの一挙手一投足、24時間監視すると警告するのだ!これまで壮絶な復讐を受ける映画のキャラクターは無数にいて、たとえば『悪魔を見た』(10)で主人公の婚約者を惨殺した殺人鬼ギョンチョルは、活字で再現してもR18+指定を喰らう凄まじい報復を受けるが、すべては一過性の惨劇に過ぎなかった。ところが、リスベットの場合は天才ハッカーとしてのIT技術を駆使してビュルマンの人生を完全支配するザ・長期戦で、ある日突然目の前に現れ、散々脅して立ち去るシーンも!当然の報いだとしても、こんな復讐は絶対に嫌だ!

リスベットが企てた形勢逆転劇を観れば、超絶哀れなビュルマンにかける言葉さえ見つからないと誰もが思うはず。蛮行をしでかしたビュルマンは一瞬反省の表情を見せるも、時すでに遅し!魔が差したじゃすまねえレベルの映画史上最強復讐プランに悶絶確実だ!

(鴇田崇)

ポイント02:ネオナチ兄弟、鬼畜後見人・・・『ドラゴン・タトゥーの女』は、“衝撃のラストカット”まで瞬き厳禁

『ドラゴン・タトゥーの女』場面写真

新星ルーニー・マーラが、アカデミー賞で主演女優賞にノミネート!!今ダントツの注目度を誇っている『ドラゴン・タトゥーの女』は、猟奇的な人間しかいない、と思えるほど、まさに鬼畜キャラの動物園だ。その実態を少し暴露しよう。

まずジャーナリストの主人公ミカエルに、40年前の少女ハリエット失踪事件を依頼するヴァンゲル一族そのものがムチャクチャ!かつてスウェーデンの経済界に君臨したヴァンゲル一族の長ヘンリックは「一族はゴロツキ、守銭奴…酷い連中ばかりだ」と初対面のミカエルにこぼすが、なにしろ彼の実兄リカルドとハラルドの二人はネオナチ!それぞれ家庭があったものの、家庭内暴力に育児放棄と、猟奇的ファミリー総動員映画は数あれど、ヴァンゲル一族の狂気度はピカイチだ。たとえば『犬神家の一族』では相続戦争というわかりやすい導入があるが、ヴァンゲル一族の狂気は冒頭では明かされない。これは怖い!

一方、後にミカエルの助手となる“ドラゴン・タトゥーの女”リスベット側も、猟奇的な人脈に恵まれている。幼少期のひどい過去があったことを匂わせるリスベットは社会的には問題児扱いで、生活していくためには後見人がマスト。そのビュルマンという小太りの後見人が鬼畜弁護士で、金が要るリスベットにつけ込み、性的関係を強要する!たとえばトンデモ看守の凌辱に絶句する『スリーパーズ』や逆恨みで相手の愛人をレイプする狂人野郎の『ケープ・フィアー』など銀幕を彩った鬼畜キャラは無数にいたが、世間の目が届かない“塀の中”や失うものが何もない“捨て身状態”の彼らとは異なり、ビュルマンは常人の顔をしてオフィスや自宅で性的欲望を満たす鬼畜なのだ!映画史上最低の鬼畜男として記憶されていくだろう。

『ドラゴン・タトゥーの女』場面写真

ミカエルとリスベット、血塗られた富豪一家やパワハラの権化など、ともに理解に苦しむ鬼畜人間たちと遭うことになる本作。その異常者たちと対峙する時、常識的な手段では逃れられないわけで、機転を利かせたミカエルとリスベットの奇策も見もの!鬼畜動物園の中、ハリエット失踪事件は無事解決するのか!?“衝撃のラストカット”まで瞬き厳禁だ!

(鴇田崇)

ポイント01:ルーニー・マーラの狂気と健気さに新ダーク・ヒロイン像を見る

『ドラゴン・タトゥーの女』場面写真

これほどサディスティックで、愛おしいダーク・ヒロインは初めてだ。暗殺者や凄腕の殺し屋、スパイなど、過去たくさんのダークなヒロインが誕生してきたが、『ドラゴン・タトゥーの女』でルーニー・マーラが演じた主人公リスベットは、新たな闇のヒロインとして、必ず観る者の脳裏に焼き付くはずだ。

世界累計6500万部超え、スウェーデン発のベストセラー・ミステリーの映像化。しかもスウェーデン版映画のヒット後に、ハリウッドで鬼才デヴィッド・フィンチャー監督によって映画化された。このダニエル・クレイグ主演『ドラゴン・タトゥーの女』は、想像を上回る出来だと批評家たちから絶賛されている。中でも、魅力的すぎると誰もがコメントしているのが、もう一人の主演、新星ルーニー・マーラだ。

スウェーデンの荘厳な自然と孤島を舞台に、40年前の奇妙な少女失踪事件を解明することとなった雑誌ジャーナリスト。その相棒として共に真相を突き止めるのが、パンクファッションに身を包む天才ハッカー、マーラ演じるリスベットだ。

物語は事件の解明が軸だが、随所にマーラの壮絶な日常が挟まれる。ある時、社会的な権力を傘に、リスベットは卑劣な性暴力を受ける。やられたフリをしながら、リスベットは用意周到に仕返しを計画するのだが、その過程が、まさにマーラのキャラクターの深さを印象づける。女性は目を背けたくなる凄惨な性暴力シーンの後、リスベットの表情ははっきり伺えない。ただ、背中のドラゴン・タトゥーが震える。やはりスパイキーな格好をしていても、弱い女の部分を吐露するのかと思いきや、無表情に日々を過ごし、全てが整った時、レイプ男に強烈な罰を与えるのだ。これが、かなりサディスティック。しかし、そこにはリスベット流の原理が一本貫かれている。同じように、彼女が選ぶ仕事、言動、生き方には、常に彼女流の原理が存在するのだ。この芯の強さに、一瞬で彼女の虜となる。

闇の部分と芯の強さをもったダーク・ヒロインは、確かに今までもいた。信念の元に復讐劇を果たす「キャットウーマン」(‘04) や「キル・ビル」(’03,’04) がそのタイプかもしれない。しかし、マーラは彼女たちほど女として出来上がっていない。風貌からも判る通り、青白い顔にガリガリの体、一見少年かと見まがうほど華奢で、タフなダーク・ヒロインではない。

では、中性的な魅力の備わったダーク・ヒロインと比べるとどうか。浮かぶのは、リュック・ベッソン監督の「ニキータ」(’90) と「レオン」(’94) だろうか。しかしマーラは、ニキータのように感情をあらわにしない。年齢的な違いもあるが、「レオン」のマチルダほど少女を前面に出さない。

リスベットは、とにかく無表情なのだ。そして思慮深い。中性的でありながら、女性としての欲望は押さえない。想像を越える狂気を秘め、つかみ所がないようだが、ラストシーンの彼女を観ると、その健気さに思わず愛おしくなる。もちろん、相変わらずの無表情なのだが、しぐさで彼女の感情が読み取れる。映画は、40年前の少女失踪から連続猟奇殺人事件解明へと話が進むが、途中からほとんどリスベットの言動を追っているような感覚になり、このラストでトドメを刺される。なるほど、だから「ドラゴン・タトゥーの女」というタイトルになるのだと思い知る。

口数も少なく、アップの表情も少ないのに、これほどの存在感を示したリスベット役のルーニー・マーラ。初のメジャー作品主演で、いきなりゴールデン・グローブ賞主演女優賞候補になるのも頷ける。スウェーデン版とハリウッド版、両方を観た批評家は口を揃えて言う。「スウェーデン版リスベットのノオミ・ラパスは最高だった。そして、マーラのリスベットはもっといい」と。デヴィッド・フィンチャー、ダニエル・クレイグという、世界的なカリスマ監督と演技派俳優を従えてなお、賞賛を浴びる時点で、マーラのリスベットがいかにズバ抜けていたかがわかる。

(工藤静佳)