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冷徹な権力者の実像をラブ視点で炙り出した異色の伝記映画『J・エドガー』

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(C)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

ジョン・エドガー・フーヴァーはアメリカ連邦捜査局、いわゆる“FBI”の初代長官で、政治を扱ったアメリカ映画に何度も登場した米国警察史上もっとも著名な人物。これは8人の大統領に仕え、約半世紀、警察組織のドンとして絶対的な権力を掌握した男のドラマだ。

フーヴァーは科学捜査の概念がない時代に、データベースによる個人情報管理を発案。指紋採取による検挙率の向上を図るなど革命的なアイデアを次々と実行、驚異的なバイタリティーで国民“憧れのFBI”の構築に一生を費やした。映画は若く正義感に燃えるフーヴァーが国家安全の必要性を痛感、仕事一筋に邁進していく青年時代から、大統領や著名人に対する盗聴を繰り返す暴走気味の晩年までを、その時代の映像をシャッフルする構成で進行する。フーヴァーの生涯で一貫していることは、つねに何かにイラダチ、米国にとって脅威の存在を探すことに余念がない“正義”の遂行だ。かのキング牧師を反体制分子と決めつけ、ケネディ大統領のスキャンダルを手中に収めるなど、時に膨張、暴走さえしたフーヴァーの“正義”を執拗に追うことで、彼の公人としての姿が興味深く描かれていく。

一方、映画はフーヴァーの私人としての素顔、その知られざるプライベートも大胆な解釈を加えて映像化していく。「弱音を吐く息子など要らない」と叱咤する強権的な母親の存在、そのスパルタに支配されながらも認められたいフーヴァーの苦悩にも似た母への愛情、有能な秘書ヘレン・ガンディとの信頼関係に基づく戦友関係にも似た愛情、そして、FBI副長官として公私ともに尽くした理解ある男、クライド・トルソンとの愛憎関係。毎日必ず一緒に食事を摂り、お忍びのバカンス計画を庁舎内でかわすこともあったフーヴァーとトルソン。40年間、苦言を呈し合うこともあれば、殴り合いの痴話喧嘩も。冷徹で孤独な権力者のイメージが強いフーヴァーだが、愛に満ちた生活を描くことで一級のラブストーリーとしても仕上げた名匠クリント・イーストウッド。フーヴァーの人生を語る主眼はいかようにもあったと思うが、ラブ視点で炙り出すことで決定的に豊かに人間性を描き切った。
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史上最強のワンマン社長、ハワード・ヒューズを演じたことがあるレオナルド・ディカプリオは、『アビエイター』(04)から数年を経て、よりリラックスした姿勢で実在した人物を演じ切った様子。トルソン、ガンディを含めて特殊メイク装着演技も自然で、伝説の男に再度命を与え、魅力的なキャラクターに仕上げてみせた。フーヴァーはプライベートを徹底的に隠したというが、彼の自伝本でさえ記されなかった心理描写が満載の本作を、フーヴァー本人が観たとして何を想うのか。誰よりもフーヴァーの感想が聞きたい異色作だ。

映画『J・エドガー』は、全国上映中

HotTrash.com:2012年01月31日06時23分]

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