映画トップ > インタビュー一覧 > 『十三人の刺客』役所広司 インタビュー

『十三人の刺客』役所広司 インタビュー

『十三人の刺客』役所広司 インタビュー
INTERVIEW
『十三人の刺客』
役所広司
時は幕末、暴政の限りを尽くす暴君を暗殺するために集まった13人の侍たちが、武士としての宿命と死闘に身を投じていく姿を描く映画『十三人の刺客』。三池崇史監督と役所広司という名匠&名優の豪華初タッグで描き出されるのは一体何か? 先日の第67回ベネチア国際映画でも激賞された本作について、凱旋帰国を果たした主演の役所広司に話を聞いた。(取材・構成・撮影/TAKASHI TOKITA)
  • 作品情報を見る
  • 上映館を探す

それぞれの想いを抱きながら散っていった侍たちの心情に想うこと

それぞれの想いを抱きながら散っていった侍たちの心情に想うこと

Q:13人には暗殺の大義名分がありますが、侍としての死に場所を探していたと思いました。
そうでしょうねえ。侍としてのお役目はない、もう侍として死ねないと思っていたときに暴君暗殺の話しがきたのだと思います。命を賭けて何かのために戦う侍としての使命、死に場所を与えられたことの興奮はあったと思いますね。13人全員がそうだったでしょう。ただ、名もない侍まで敵も味方も大勢死ぬわけですが、結局、自分が思っていた死に場所や、求めていたものとは何だろうというむなしさが最後は残っていたように思いましたね。

Q:“ラスト50分の壮絶な死闘”での侍たちの表情は、険しいだけじゃなかったですからね。
新左衛門ですら何が残ったのだろう? と思ったことでしょうね。あれだけの壮絶な戦いをして敵はたくさん死にますが、言ってみれば暴君の家臣たちには恨みも何もないわけですよね。それだけに想像できないほどのむなしさを抱くだろうなと思いましたね。きっと暴君の側も13人と同じような心境だったのかもしれない。お家のための武士道、天下万民のための武士道、そういう立場の違いがあるだけで最終的には侍の意地の激突でしょうね。

Q:暴君も時代の転換期を察知した上で、暴政の限りを尽くしていたのかもしれませんよね。
何が侍としての死にざまかは、暴君や家臣の半兵衛たちにとっても複雑だったと思います。ただ、戦わねば事態は収まらなかった。半兵衛と新左衛門は旧友なのであの世でまた会おうという感じでしょうが、侍たちはそれぞれの想いを抱きながら散っていったんでしょう。おそらく太平洋戦争でも彼らのような気持ちが残っていて、それを頼りに戦ったのかもしれませんね。実際に戦った兵士たちの心境は、こんな感じだったのかもしれないですよね。

ガチで斬られまいと必死で命がけで撮影した、クライマックスの落合宿の死闘!

ガチで斬られまいと必死で命がけで撮影した、クライマックスの落合宿の死闘!

Q:13人の刺客を率いるリーダーを演じる上で具体的なリクエストはあったのでしょうか?
いや。なかったですね。ほかの人たちにも言ってないのかな。おそらく三池監督は、言う人じゃないんでしょう。セットに入ると監督が作られた雰囲気があって、そこで感じるものはありました。前半は特に動きが少なく座った芝居が多いのですが、慰み者の女の子と会うシーンは本当にびっくりしました。決して隠さないという監督の狙い、この映画の狙いがあったような気がします。だから僕もあんなに驚いた顔になっちゃったんですよ(笑)。

Q:その反面、クライマックスの落合宿では、三池監督は終始ハイテンションだったそうで?
ええ。そうですね。盛んに言われていたのは、最後の落合宿での大立ち回りでした。本当に命がけでやってほしいと。約束事の、型通りのアクションではなくて、斬るための戦いを目指されていましたね。『命を賭けた戦いをしてくれ!』と、ワカットごとにね(笑)。工藤(栄一)監督の映画も泥臭いチャンバラ活劇が斬新でしたが、それを超えなければいけない思いもあったのかもしれませんね。1〜2回テストをして、慣れる前には本番でした。

Q:そんな命がけのチャンバラに挑まれた効果で、未曾有の大迫力シーンが撮れたのですね。
三池監督は、慣れる前の、あいまいな状態で撮りたいと言われていましたね。だから実際に間違えるんですよ(笑)。斬り方の順番を一度間違えると、どんどん狂っていく。すると、成立させようと思って必死になるので、斬られたらどうしようという気持ちが顔に出ますよね。どうにかカットの間だけは生き抜こうと(笑)。1回しか斬られない予定が、2回斬られるシーンもあった。三池監督の狙い通りの、リアリティーが出ていると思いますよ(笑)。

斬って、斬って、斬りまくれ! にベネチアの1,200人の観客が大興奮!

斬って、斬って、斬りまくれ! にベネチアの1,200人の観客が大興奮!

Q:さて、先日のベネチア国際映画祭では大熱狂で迎えられたそうですが、いかがでしたか?
興奮しましたね。この映画祭で初めてお客さんと一緒に『十三人の刺客』を観ましたが、手を叩いて、笑って、劇場が波打っていました。まるで参加型映画で、映画の楽しみ方の1つを再確認しましたね。1,200人のため息だけでも、ザーとくる感じが伝わってきました。今までいろいろな映画祭に立ち会ってきましたが、これほどの実感というのか、映画にのめりこんで観ている人間の生の感情が直接伝わってくる体験は初めてだったと思いますね。

Q:7分間のスタンディング・オベーションもあったそうですが、反応が強かったシーンは?
新左衛門が“皆殺し”という紙を出すシーンで、『いけー!』っていう空気になっていましたね(笑)。爆破の血の海や牛が出てくるシーンでは、『マジかよ!』みたいな空気になって大騒ぎでしたね。楽しかったですよ。実は演じ手としては、『斬って、斬って、斬りまくれ!』というセリフを本当に言うの? と三池監督に聞いたのですが(笑)、思い切って言ってよかったですね。これぞ時代劇という昔からの王道があったんだなと思い直しました。

Q:一観客として観た場合、新左衛門のそのセリフに最高のカタルシスを感じるはずです。
自分の中でリアリティーを持てるようにしていました。よく時代劇であれこれ言ってから斬り始めますが、その間に斬ろうよと思うじゃないですか(笑)。ただ、ベネチアで思ったのは、そういうシーンでお客さんが気持ち良さそうだということ。なるほど古典的な手法だけれど、これが気持ちいいのかと。さまざまな時代劇があります、三池監督は王道の時代劇に挑戦した。カルトな演出もあるけれど(笑)、骨太な作りにしたかったんでしょうね。

いずれは役所監督流時代劇も!? 伝統は引き継がねば終わってしまう

いずれは役所監督流時代劇も!? 伝統は引き継がねば終わってしまう

Q:世は時代劇ブームの再燃で盛り上がってきましたが、時代劇の面白さとは何でしょう?
腐った政治を洗濯するヒーローがいつも出てくる。もちろん恋愛モノもあるでしょうけれど、そういうものじゃないでしょうかね。時代劇の醍醐味は、ある日突然、世直しのために志士が出てくるというのはありますね。それと今回は火気も使っていますが、最終的には刀。火気は迫力がありますが、痛みを感じない。最後は肉弾戦ですよね。今回の映画で面白いじゃないかという新たなファンが生まれてくれれば、また作られていくでしょうね。

Q:それこそ監督という立場で、役所流時代劇を撮ってしまうというのはいかがでしょう?
時代劇ですか(笑)。自分が監督するなら、熟練の人がいないと撮れないでしょうね。『この道具、どう使う?』 ってなると思う(笑)。ただ、大先輩がいる間に作っておかないと、時代劇を作れなくなってしまうでしょうね。伝統は引き継がないと、終わってしまうので。

Q:最後になりますが、映画『十三人の刺客』が公開される今、何か思うことはありますか?
時代劇で動員することは難しいというジンクスがあるようで、先日も時代劇を盛り上げようというキャンペーンをやったばかりです。そういう不安はありますが、暗闇の中で2時間、ドキドキ、ハラハラする、こういう映画も楽しんでほしいと思いますね。侍たちが命がけで戦い続け、逃げずに立ち向かっていく姿は説明的ではないけれども、必死で血まみれになっている姿を観るだけで、十分感じるものがあると思います。ぜひご期待ください。

関連リンク