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インタビュー

『チーム・バチスタの栄光』 井川遥 単独インタビュー

『チーム・バチスタの栄光』 井川遥 単独インタビュー
INTERVIEW
『チーム・バチスタの栄光』
井川遥
2月9日から公開される『チーム・バチスタの栄光』。現役医師の書いた、話題のミステリーの映画化だ。非常に難しいとされる、心臓の「バチスタ手術」。その手術を次々に成功させ、 世間の注目を浴びるようになった“チーム・バチスタ”。ところが、ここに来て、相次いで3件の手術に失敗。その謎を解明すべく、同じ病院につとめる竹内結子演じる医師と、阿部寛演じる厚生労働省のお役人が立ち上がる。はたして、これは事件なのか?それならば、7人のバチスタ・メンバーの中に、犯人はいるのか―!?
 そんなバチスタ・メンバーの紅一点、看護師の大友を演じた井川遥さんにインタビュー。ミステリーの謎解きをかき回す、ちょっとクセのあるキャラクター、“大友さん”の誕生秘話に迫りました。

“大友さん”が、できるまで

“大友さん”が、できるまで
(C)2008映画「チーム・バチスタの栄光」
製作委員会

井川さんが演じるのは、バチスタ・メンバーの紅一点、看護師の大友。看護師は、バチスタ手術のリズム・メーカー。緊張感あふれる手術現場で、ぴったりのタイミングを見計らい、医師に「機械出し」…つまり、道具をきびきびと渡していく。そんな重要な役割だというのに、大友さんは…なんだか、頼りない!大友さん、大丈夫!?
―大友さん、興味深いキャラクターですよね。
「脚本を読んで、他のバチスタ・メンバーよりは、オーバーだし、コミカルな感じがしたんですね。そういう役を、どこまでリアリティをもってやればいいのか…撮影に入る前に、皆で手術を見学したんです。「機械出し」の準備をするところから、麻酔して、開胸するまで全部。そうしたら、看護師はかなり優秀じゃないと務まらない。先生より先に段取りをわかって、「機械出し」をするんですよね。そうなると、ますます大友は…!脚本に書かれているキャラクターと、実際の看護師の役割が、かけ離れている気がしたんです」
―大友さん、かなりヒヤヒヤさせますよね。
「完成した作品を観ると、演出面で大友の「できなさ」がクローズアップされているんですが、監督ともお話したんですが、大友はきっと…段取りがちょっと悪かったり、集団の中に入った時、プレッシャーでうまくいかなくなる人、それで悪循環になってしまう人…そういう人なんだな、と。そういうことで、落ち着いた気がします。もっと冷静な時に「機械出し」をしたら、もっとできる人なんじゃないかな、と」
―後半の場面を見ていたりすると、大友さん、毅然とした強さもあって。
「自分の中で、独特のこだわりや時間の流れがある感じがするんですよね。阿部さんに疑われた時も、ふてぶてしく「やってません〜!」みたいな(笑)。コドモっぽいのかと思うと、すごく我の強いところがあったり。感情的には不安定な人なのかな」
―演じ終わって、大友さんの印象は変わりましたか?
「オーバーなところは、コミカルで漫画的な感じがしたので、切り離してやっていたんですが、そうじゃないところは、わりと本人はマジメなんだな、と。淡々とはしていないんですよね。大友さんなりに、一生懸命生きている感じがしました」
―演じ終わると、好きになったりします?
「うーん、大友さん、楽しかったな、みたいな感じです(笑)」

中村監督の演出の面白さ

中村監督の演出の面白さ

―大友さん、阿部さんと竹内さんが、7人のメンバーをまわって、犯人探しの面接をする時に、ウソ泣きするでしょう?阿部さんに尋問されて。しかも、顔を両手で覆っている大友さんを阿部さんが…あのシーン、面白いですね。
「脚本を読んだ時から、相当、変わっているなぁと(笑)。大の大人がウソ泣き!?って(笑)。演じるには面白い役だなと思いました。脚本がすごく面白かったんですけれど、監督はそれにこだわらず、現場で面白いことが出てくると、どんどん変えていくんです。大友は、どんどん膨らませていい、脱線していいキャラクターだと思うんですね」
―あのシーンは、もともとどんな設定だったんですか?
「ト書きだと、(阿部さんの尋問に対して)“ティッシュで鼻かんで、ポンって捨ててください”って書いてあって、十分それでも面白いと思ったんですが、現場に入ったら、『目、開けて泣いてください』って。それも、号泣で(笑)。私、できるかどうかすら、わからないと思ったんですが、やるほどに「面白い」と言われて。ああ、これでいいのかと。監督の要求に、できる限り、応えて演じたい。自分の中に、そういうスイッチはありましたね。面白い演出をして下さるので、それをできるようになりたいなと。だから、今日、何を言われるんだろうって楽しみに思っていました。ウソ泣きの後、大友が阿部さんに…あの演出も、そうなるの!?って。監督、相当に面白いですよね。周りの人からは、モニター見て、監督がニヤニヤしているとOKが出るって言われました」
―中村義洋監督は、具体的な演技プランを話されるんですね。
「そうです。気持ちとしてOKっていう時もあるんですが、動きとして…たとえば、竹内結子ちゃんが、声の小さな患者さんに近づいていく場面がありますよね。あそこでも、「もっと歩幅を広げれば、速く到着できる」とか。動きとしてのこだわりを、ものすごく感じました」
―『アヒルと鴨のコインロッカー』の監督ですよね?シンプルで、パワフルですよね。多くを詰め込まず、ポンと放たれたひとつの描写が、威力的というか。
「確信があるというか…監督の中のOKは、他はなくて、ひとつしかないというか。コメディアンの方のような、冷静に計算しつくされたものと、本番で計算せずに思いっきり出すもの、その加減が難しいんですけれど。いいところは、いっぱい掬ってくれるような監督でしたね。芝居中には「そうではなくて、こういうのがいい」とはっきりおっしゃるんですが、普段話すと、シャイな感じの方なんです」
―『アヒルと鴨のコインロッカー』は、どう思いました?
「監督の頭の中は、どうなっているのかなって。役者の人は、監督と同じイメージを持ってできたのか…自分だったら、時間軸がいったり来たり、仕掛けは最後までわからないっていう中で、どういう風にやったんだろう…実際に、撮り方も大変だったって聞いたんですけれど。あの作業を組み立てていけるなんて、監督の頭の中はどうなっているんだろうって。あの映画にも、笑いというか、可笑しみがありましたよね。シャレがきいているというか」
―実際に、監督とお仕事されると…
「すごく観察している方なんですよね。どうしても、私たちは芝居をやるときの体のクセが出てしまう。自分がそこに行きたいところがあって、それを台本とあわせていく時に、「それ、要らないよね」と。言葉は柔らかいんですが、はっきりとおっしゃるんです。先ほど、おっしゃられたシンプルっていうのは、そういうことかもしれませんね。『これをやるためには、いろいろなことは要らないよね』って。そういう冷静さが、あるんですよね。求めていることは、シンプルでもあるんですが、現場では、わりと優しく、お芝居を見ててくれているっていうところがあります」

井川さんの演技、気になります

井川さんの演技、気になります

―『大停電の夜に』の恋に悩むOL役や、TVドラマ『孤独な賭け』の秘書役…井川さんの演技って、なにか気になるんですよね。見終わっても、印象に残っていて。
「役者さんの中には、「表現することにストレートに向かっていく人」もいれば、「芝居していない時は別人」という人もいると思うんです。私は、後者のタイプで…表現することに臆病な部分も、いっぱいあるんですね。いつも「これでいいんだろうか」と思ったり。それは芝居をしていない時でも、自分の中で、揺れ動いている部分があって。それが芝居に入ってくるんじゃないかと思うんです。自分の中で、大胆で天真爛漫な部分と、「あれは、どう思われたかな」とごちゃごちゃ考えてしまう部分が混在しているんですね。それが、芝居していく上で、出てくるんじゃないの?って言われたことがあるんですが、言い当てられている感じがしますね」
―なんというか…リアルに届く感じがあるんですよね。
「たとえば、台詞を言うときに、「自分だったらどういうだろう」って考えますよね。できる限り、その言葉に変な意味がつかないように、「どう言ってあげたら、優しい言葉になるのか」とか「どう言ってあげると、言葉はきつくても、やさしく聞こえるんだろうか」って。聞こえるように言うのか、独り言のように言うのか、言い方によっても、その時の気持ちは、変わりますよね。だから、「言葉はこうだったら、このままのニュアンスにならないようにすればいいんだ」とか自分なりの解釈の仕方が見つかると、いけるんですけれど…。役にも寄りますが、それが見つかるのと見つからないのとで、時間のかかり方が違いますね。アプローチの仕方というよりは、自分の中で解釈が生まれるか生まれないか、それによって、違うんですね」

役者をはじめたのは…

役者をはじめたのは…

―芝居を始めたきっかけは、何だったんですか?
「舞台を見てからですね。『ガリレオの生涯』という柄本明さんが出ている舞台だったんですけれど。所属事務所の社長がお芝居の好きな人で、「女優やろうよ」ってずっと誘われていたんですね。グラビアのお仕事をやったりしていくうちに、お芝居のお話、ドラマのお話を頂くようになったんですが、自分の中ではっきりした気持ちにはならなかったんです。でも、舞台をやろうと誘われて、一緒に見に行くうちに、小劇場によく行くようになって」
―舞台には、また映画とは違う感覚がありますよね。
「映画だと、作品として編集されたものを見ますよね。遠くで、自分の知っている役者さんが芝居しているという感じだったんですけれど、舞台は、もっと生身で、その時の気持ちの伝わり方がぜんぜん違う。役者の人が、ひとりの人間として見えたんですね。それが、自分ができる・できないではなくて、いま声をかけられているのなら、そういう表現をすることも面白いのかもしれないな、と思ったのが、きっかけです」
―今後、やってみたい役はありますか?
「肝っ玉母さんみたいな役。もっと歳をとってからでいいので、おっかなくて、強いお母さんを、やってみたいですね。相変わらず、すごくドジな人も、演じていて楽しいので、やりたいですし。そういう役は、憎めないなっていう風に思えると、どこかチャーミングに見えてくるのかなと思うし。冷たい人もやったことがないので、冷たい人もバシバシ(笑)やりたいですね」

インタビュー中、ちょっとした事情で、取材時間に変更が。そのときにも、即座にこちらの質問意図を受け取って、繊細な内容を即答してくださった井川さん。インタビュー中、「監督が面白い演出をして下さるので、できる限り、それに応えて演じたい」とおっしゃっていましたが、さすがは役者さんと唸らされた一幕でした。今後の演技、やはり気になります。

写真・取材・文:多賀谷浩子

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