この人が旬!Vol.1 塩谷瞬 『ROBO☆ROCK』インタビュー


- 『ROBO☆ROCK』
塩谷瞬
- 「よろしくお願いします」と部屋に入ってくると、机の上に置いてあった「@nifty映画」のプリントアウトを見ながら、「この映画、面白いんですか?」とごく自然に話を始めてくれた塩谷さん。ミラ・ジョヴォヴィッチのインタビュー記事を見ながら、「ミラ・ジョヴォヴィッチ、好きなんですけどね」。初対面なのだけれど、まるで「前に会った時の続き」のような気さくな雰囲気になる。「ハイ、インタビューを始めてください」という受身の姿勢ではないこの感じが、とても印象的だった。
リアルな作品が好き
そんな塩谷さん、自分が観にいく映画は
「最終的には、ヒューマンな作品が好きなのかなって思いますね」。
話を聞いていくと、塩谷さんのいう“ヒューマン”は、よくある感動大作というよりは「人間味あふれる、リアルな作品」という意味合いのよう。最近では映画を観に行く時間もなかなかないそうだが、映画館に出かける時は、「脚本がいいと言われる作品や、ヨーロッパなどの雰囲気のいい作品、そして商業映画に至るまで、全体的に観る」のだそう。それは、演じる側としても同じだ。
「いろいろな作品に出演したいと思いますね。演じる側としては、振り幅があった方がいいので。ただ、嘘っぽいもの、商業的な映画よりは、リアルな作品の方が好きですね」
塩谷さんというと、まず思い浮かぶのが井筒和幸監督の『パッチギ!』。そして、その後に公開された『赤い文化住宅の初子』を観ると、まったく違う塩谷さんに驚かされる。
「あのふたつが、いちばん本物っぽい映画かなって気がする。ローバジェットだけど、僕も一番好きだし、空気感だけで伝わる作品じゃないかなと」
役へのアプローチ
そんな風に役によってまったく違った表情を見せる塩谷さんだが、役へのアプローチは、作品によってどんな風に変わってくるのだろう?
「役に乗っかっていく作品もあれば、自分で作っていく作品もあるし、監督に任せる作品もある。『パッチギ!』なんかだと、監督がすごく才能のある人なので、叩き込んで役を作ってくれて、それがナマのリアルな康介(塩谷さんが演じた役)になっていると思うし。それは、想定外の演技というか、リアルな感覚なので、それはそれでいいし、『赤い文化住宅の初子』はプロットを読んで、一回脚本を読んだら、もうそのまま現場に入って、感覚で表現されたような台詞だったので、台詞も全部すっと入ったし、全部ワンテイクでOKって感じで、もっともっとやりたかったなって気がする。作品によって全然違いますね」
すっと入れたという『初子』だが、
「そういう作品は、ああいう情景と空気と感覚を知っている人じゃないと演じきれないと思ったので、「映画にするなら、ぜひやらせて下さい」と言って、やらせてもらったんです。僕も小さい頃、あの映画のような環境で育ったので。あの空気感、いまの若い人で知っている人なんていないと思うので。あれは感じたことのある人にしかできいないものなんじゃないかなと、すごく思って。それを経験しているのは、普通の人よりも武器だと思ったし、だから間違いなくキャスティングされたのかなと思います」
『ロボ・ロック』をやってみて
(C)2007 「ROBO☆ROCK」製作委員会
今回、『ロボ・ロック』で演じたマサル役については、
「まずは、やったことのない役だったので、やってみようと。あとは、1回オファーが来た時に、他の作品と被っていてお断りしたんですけれど、1年くらい待ってもらったので、じゃあ、そこまで待ってもらったんだったら、ぜひやりましょうということで。ただ、可能性というか、とんでもない作品になるのかもしれないというのを脚本から感じていたので、やってみようというのはありましたね」
実際にやってみると…
「どんどん狂ってパワフルになっていく作品だから、周りのインパクトが強い方が、マサルは真ん中で振り回されながら、それを受け止めていく側なので、映画として面白くなるかなと思いました。ただ、そこでペラっとするんじゃなくて、人間的な部分もちゃんと描きたかったので、そういう部分では意外にヒューマンよりの作品になったのかなという感じもしています」
そうなのだ。もっと突き抜けた作品なのかなと思ったら…
「うん。どっちがいいのか、微妙なところなんですけど。だから、いま、DVDでもっと変わったアレンジにしたらどうですか?みたいな提案をしているんです」
塩谷さんの映画への関わり方
日ごろから、ものづくりが好きだという塩谷さん。映画を作ってみたいという思いもあるのだろうか。
「そうですね。もう今、自分も作っているというか、映画に参加しているうえで、生意気だけど、いろいろな意見を言わせてもらっています。僕はどのポジションにいても、作品に関わっていく仕事の仕方をしているので、それは多分、どのポジションに戻っても、できると。もちろん経験が違いますから、年上の人とは同じようにはできないかもしれないですけれど、経験を積みながら、どのポジションの人ともやっていけるようになりたい。そのために、いろいろなスタッフさんと話し合いながら、やっています」
今回、『ロボ・ロック』の現場で提案したのは、どんなことだったのだろう。
「ただ元気なだけの空っぽな映画にしたくなかったので、ヒューマンというか、マサルの心情的なところを描いて欲しい。前後はむちゃくちゃにしてほしいというのはお願いしたんですけれど。おとし所はおとし所で、マサルっていう人間にターゲットを当てるために、自分も芝居がんばりたいし、見せ方でもこうできますか?と提案したり。今回は、監督が任せて、カメラマンさんとスタッフさんでカット割を決めて撮っていて、よかったら監督がいきなりカットを増やしたりする、というやり方だったので、その辺でむちゃくちゃにならないか、現場では気を遣ってやっていました」
もの作りが好きな人だと、須賀大観監督は触発される部分の多い人なのでは?
「面白いなあと思いましたね。普通の映画監督っぽくないので、クリエイターとして個性や世界観をもっているので、それは絶対活かした方が作品として素晴らしいと思ったし、監督自身を役作りに投影させた部分もあります。締めなければいけないところは、監督なりに怒ったりして。「なんだこりゃ」って突っ込む場面もあったりして、面白かったです」
監督の人柄を役に反映した部分というのは?
「基本的にオタクっぽくて、だらっとした感じなので(笑)。人間らしい感じというか、抜けた空気、ダメな感じを、そのまんまマサルのダメな感じにした方が、作品的にわかりやすくなるのじゃないかなと思って、勉強させてもらった部分はありますね」
共演の人とのかけあい
この作品、共演者の顔ぶれも面白い。物語の鍵を握るロボットの話をマサルにもちかけるフシギな男・ニラサワを演じるのは、長塚圭史率いる劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」の中山祐一郎だ。
「中山祐一郎さんは、映画的な動きじゃないことをされたりするんです。そこにのっかっていったり、台詞以外の部分でも、勢いよく突っ込んでこられる感じを「絶対そっちの方が面白いよ」って、ふたりでアドリブで芝居を作っていたりして。その辺は面白かったですね。舞台役者だからこそ、出来る部分もあるんじゃないかなと。面白みをどこにもっていくのかって言う部分で。ニラサワだったら、あの細かい動きだったり、純粋でオタクでむちゃくちゃっていう、いろいろな要素が混ざったキャラクターを、そのギャップで見せていったり。そんなニラサワとマサルとの対比が面白いと思うので、お互い、現場でそういうものを感じ取りながら、作っていったんです」
役者の醍醐味
『ロボ・ロック』の主人公・マサルには、本当は夢がある。けれど、一度、挫折を味わった彼は、なかなか夢に踏み出せない。「これが自分のすべきことなんだ」というものを見つけたくて、この映画の登場人物たちは悩んだりする。塩谷さんにとって、役者をやっている喜びとは―。
「役の中で苦しんだり楽しんだりしている部分っていうのが、やり甲斐あるってことだと思う。映画って2時間かけた総合芸術なので、音楽や照明やカメラマンさんの絵コンテがあって作品が出来あがって、僕たちが描いているものが、編集も含めて、ひとつになった瞬間っていうのが、やっぱり、いつも感動するし、それを人が観て、何かを感じてくれるんだなって思った時にすごく幸せを感じる。人から「その作品を観て何かが変わりました」って言われた時は、やっぱり、むちゃくちゃうれしいですね。ものを作るというのは、そういうことなのかなと思いますね」
俳優という役割を果たす、というよりも、ひとりの作り手として映画に参加する。そんな映画への関わり方が印象的な塩谷さん。インタビューに関しても、決して受身ではない。インタビュアーとともに「作っていく」意識を感じました。短い時間でも、情と熱さがたっぷり伝わってくる。今年だけで出演作7本。オファーが耐えないのは、演技はもちろん、このあたりにも理由がありそうです。
『ROBO☆ROCK』11月23日、渋谷Q-AXシネマ他、全国ロードショー!
- 11月23日、渋谷Q-AXシネマ他、全国ロードショー!

