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インタビュー

人間の境界線とは?『ブレイブ ワン』ニール・ジョーダン監督独占インタビュー

人間の境界線とは?『ブレイブ ワン』ニール・ジョーダン監督独占インタビュー
INTERVIEW
『ブレイブ ワン』監督
ニール・ジョーダン
ジョディ・フォスター演じるラジオDJ、エリカ。結婚を間近に控え、幸せの絶頂にいた彼女を襲った不慮の事故。それによって、幸せの風景に見えていたNYの街が、彼女にとって突如、恐怖の対象へと変わってしまう。失意の彼女が向かった先は、ガン・ショップ。そして、彼女はある行動に出る―。
ジョディ・フォスターが迫真の演技で見せる『ブレイブ ワン』。メガホンをとったのは、『クライング・ゲーム』などの作品で知られるニール・ジョーダン監督。かつて小説を書いていた時期もあり、これまで自ら脚本・監督を手がけてきたジョーダン監督が、今回、初めて自分以外の脚本を手掛けている。それほどまでに惹かれた、この物語への思いとは―?

自分の作品として消化するには

自分の作品として消化するには
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ジョーダン監督が脚本を書いたわけではないにも関わらず、この映画には、ジョーダン監督の作品らしさが、そこかしこに感じられる。たとえば、オープニング。音楽や詩的なトーンで、その作品のテーマを表現してしまう仕掛けは、ジョーダン作品のファンにはなじみのあるもの。また、決して白黒はつけないが、必ず希望のあるラスト…これもジョーダン作品には欠かせない要素。この映画は、まさしくジョーダン監督の作品として消化されている感がある。

「最初に、プロデューサーのジョエル・シルバーさん、ジョディ・フォスターさんから脚本が送られてきたのですが、自分で書いた脚本ではないので、正直なところ、この映画を作れるかなと思っていたんです。でも、女性の主人公が、自分の中に棲む、自分だとは到底思えない、恐ろしいモンスターのような自分を段々と発見していく。以前の自分を失うことで、別の自分を見出していく…そういうものを表現できたなら、これは私の映画としてできるんじゃないか、それを表現できなければ、私の映画にはならないなと思ったんです。
最初に脚本を読んで興味惹かれたのは、エリカが境界線を越えるというところでした。人間というのは、社会的にきちんと生活をしていても、あることを堺に、自分でも驚いてしまうような、許されざることを犯してしまう面も持ち合わせている。考えてみれば、私たちが住んでいる世界は、そういう恐ろしいことがおこりうる世界なんだと思います。
エリカの場合には、自分の彼を失ってしまったことで、頭が狂うほど悲しみ、自分というものを失ってしまう。私たちの人生の中でも、悲しみのために、自分がまったく違った人間になってしまうということが、ありうるのではないでしょうか?」

幸せな風景に思えたNYが、恐怖に変わったら…

幸せな風景に思えたNYが、恐怖に変わったら…

この作品を描くにあたって、9・11のことも考えたというジョーダン監督。舞台となっているニューヨークの街も、エリカの心境を映すものとして重要な役割を果たしている。ジョーダン監督というと、故郷・アイルランドの印象が強い。NYになじみのない監督は、撮影にあたって、ずいぶんとこの街を歩き回ったという。

「ニューヨークは、不思議な街ですよね。行ったことのない人でも、ニューヨークといえばイメージできる。なじみのある場所だと思うんです。でも、今回、私はそんなニューヨークを忠実に写し取るのではなくて、どちらかといえば、美しいおとぎ話のように思っていたものが悪夢のように見えてきてしまう、そんな場所を見つけようと思っていました。だから、ロケハンで重要だったのは、よくわからない迷いと、美しさ。その両方がないと、彼女にとって、親しみのあった場所が恐怖にとらわれた場所に変わってしまったことを表現できないと思ったんです。そんな場所を3〜4ヶ月、歩き回って探してまわりました」

ジョーダン監督が描き続ける、境界線

ジョーダン監督が描き続ける、境界線

今回、主人公のエリカが越えるのは「モラル」の境界線だが、思えば、ジョーダン監督は、これまでも、たとえば男女の「性」の境界線など、さまざまな作品で境界線を越える人間を描いてきた。

「この映画で、彼女の声が語るところがありますよね。いい・悪いではなく、どうして彼女がこうなってしまったのか、彼女自身も理解できない。もうひとりの自分がいて、法的に許されないことをする。どうして自分はこんな行動をしてしまうのだろう、どうして誰も自分を止めないのだろうと、彼女自身が二つに分かれていく。そういう部分が非常に面白いと思ったんです。
最初にこの脚本を読んだ時から、彼女がとる行動には不合法なことがたくさんあるのに、彼女への同情が消えることがなかったんです。いろいろな段階で、いろいろな事件が起こる。そのたびにいつも、自分は彼女への同情を失ってしまうのか、問いかけていました。彼女のやっていることが悪いことなのにも関わらず、私は彼女に同情を感じ続け、その気持ちがあったからこそ、この映画を引き受けようと思ったんです」

その感情があったからこそ、一歩間違えばセンセーショナルに受け取られかねない衝撃的な設定が、観客の心に染み入る物語に着地した。ジョーダン監督ならではの詩的な描写も美しい、この作品。映画を見る面白さをあらためて味わわせてくれる。

撮影・取材・文: 多賀谷浩子

10月27日(土) サロンパス ルーブル丸の内ほかにて全国ロードショー

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