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インタビュー

『スターダスト』原作者、ニール・ゲイマン独占インタビュー

『スターダスト』原作者、ニール・ゲイマン独占インタビュー
INTERVIEW
『スターダスト』
ニール・ゲイマン
『スターダスト』は、ちょっと変わったファンタジーだ。とかくファンタジーというと、『ハリー・ポッター』などに代表される、壮大でシリアスな世界を想像しがち。けれど、この映画は、それとはちょっと違う。この肩のチカラの抜け具合。不思議にユルくて、いまっぽい。なんだか、とってもリアルなのだ。名優デ・ニーロがこれまで見せたことのないチャーミングな衣装で踊ってしまったり、ミシェル・ファイファーが楽しげに、欲深な魔女を演じていたり。既存のファンタジーの世界観と、リアルでアップデイトな面白さ。この混ざり具合は、いったい何? その秘密を『スターダスト』の原作者であり、いまイギリスでホットな注目を集めているニール・ゲイマンさんにお伺いしました。

ゴーストの場面が気に入っています。不謹慎で(笑)

ゴーストの場面が気に入っています。不謹慎で(笑)
(C)2007 Paramount Pictures.
All Rights Reserved.

―ファンタジーというと、『ハリー・ポッター』のようなシリアスなものが浮かびがちだと思うんです。でも、この映画は、非常にリアル。いまの若い人の感覚ですよね。

「僕は、ファンタジーがシリアスである必要はないと思っているんですよ。これまで、ファンタジーというものは、二つの傾向に分かれていた気がするんです。ひとつは非常に重みのあるシリアスなもの…つまり、ファンタジーの大作映画ですね。そして一方は、『シュレック』のようなパロディ的なもの。この『スターダスト』は、リアルなものを描いていたり、ごく普通の人間が出てきたりします。ファンタジーなんですが、壮大な戦闘シーンも出てきません。そして、ふんだん笑いが散りばめられています。僕が特に気に入っているのは、ゴーストたちの場面。不謹慎ですよね(笑)。地上の出来事を見ながら、皆をからかって、いちいちコメントする。でも、彼らは死んでいるから何を言ってもいい(笑)。そんな感覚が好きなんです」

―ゴーストのシーン、ファンタジーではなかなか見ない場面ですよね。ゲイマンさんは、これまで、たくさんの作品を書いていらっしゃいますが、こういったファンタジーを書いてみたいという思いは、10代の頃からあったんでしょうか?

「若い頃は、これを書こうなんて気持ちはなかったんですよ。読んでみたい!という気持ちばかりでした。こういったファンタジーが大好きだったんです。『スターダスト』に出てくるような、魔女が出てきて魔法を使ったり、ゴーストや空飛ぶ海賊たち、流れ星が出てきたり。でも、それらが全部出てくる物語はないので、そういうのがあったらいいなぁと思っていたんです」

とにかくリアルにしたいと思いました

とにかくリアルにしたいと思いました

―ファンタジーによくある中世的な世界観と、いまのリアルな感覚が混ざっているのが、ゲイマンさんの作品は面白いですよね。昔からあるような中世的なファンタジーもたくさん読んで来られのでしょうか?

「『昔、昔あるところに…』っていうのですよね?そういう良質のフェアリー・テイルもいろいろ読んできました。今回の『スターダスト』は、本でも映画でも、すごくリアルにしようと思っていたんです。私たちが見て、すんなり現実だと思えるような、実際にあった、ビクトリア朝のイギリスが舞台になっています。でも、壁の向こうには魔法の国、フェアリー・テイルの世界があるんだ、という設定なんです。
この映画について、アメリカでは、『ファンタジーとしてはちょっと違うんじゃないか?』とか、『デ・ニーロがあんな役をするのはちょっと…』とか、不謹慎なユーモアが受け入れられなかったり…批判的な意見が多いように感じたんです。でも、イギリスや日本では、そういった感想を抱く人があまりいないようです。たぶん、ファンタジーに対する見方が違うんでしょうね。おそらく昔から、いろいろなものを受容する伝統があるんだと思います。そして、宮崎駿さんのようなクリエイターが日本にいることも大きいのではないでしょうか。彼の作っている映画はすべてファンタジーですよね。でも、アニメだから、ファンタジーの世界もすんなり受け入れられている。アメリカのある記事が、『スターダスト』は宮崎アニメの実写版のようだと言ってくれたんですが、非常にうれしかったです」

宮崎駿さんの描く世界には「悪者」がいないんです

宮崎駿さんの描く世界には「悪者」がいないんです

―そんなゲイマンさんから見た、宮崎駿さんの作品の魅力とは?

「『もののけ姫』の英語版の脚本を依頼された時、『もののけ姫』を100回くらい観たんです。普通、100回も1本の映画を観たら、殺意がわいてくるものです(笑)。でも、『もののけ姫』は違いました。それは非常にいい経験で、観るたびに新しい発見があったんです。彼の世界はなんて有機的なんだろうと思いました。そこに描かれる人や動物、すべてのものが自分がサヴァイヴするために一生懸命になっている。だから、その思いどうしが衝突することもある、という描かれ方をしている。そこには、悪者がいない。皆、必死に生きようとしているだけなんです。僕がフィクションで心がけるのは、誰の見方で描くかということ。誰の立場から物語を見るか、その視点を変えれば、いろいろな物語が見えてくるんです。たとえば、この映画のミシェル・ファイファーにもっと焦点を当てていれば、私たちは彼女にもっと心を動かされ、感情移入できたかもしれないですよね。
宮崎駿さんについて語り始めると、明日まで続いてしまいそうです。彼は天才だと思います。昨日は、その天才と一緒にお茶を飲み、お話ができました(昨日とは9月19日。これについては、ゲイマンさんのウェブサイトにアップされています)。彼のような人は、他にひとりとしていない。世の中には、そんな風に天才と呼べるクリエイターは本当に少ないと思うんです。作品で世の中を変える、人の見方を変える、そういうことができるという意味で、いま生きている映画作家の中で、宮崎さんはおそらく、いちばん重要な人物だと思います。日本人はそれを理解していると思いますが、いまやっと世界のほかの国々がそれに気づき始めた。彼のような人物は二度と出ないかもしれない。あんなビジョンを持って、しかもそれを描いて表現することができ、クリエイトする意欲にあふれている。『もののけ姫』の後、いま3本目にとりかかっていますよね。世界でいちばん素晴らしい人だと思っています」

ピュアな瞳でお話されるゲイマンさん。心地よいリズムの、やさしい話し方も印象的でした。ゲイマンさん原作の『コララインとボタンの魔女』は来年、ダコタ・ファニング主演で公開予定。また、ご自身のコミック『デス/ハイ・コスト・オブ・リビング』で映画監督デビューすることも決定しています。今後の活動からも、目が離せません。

撮影・取材・文: 多賀谷浩子

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